飛行機が飛ぶ理由

 

「飛行機はなんで飛ぶの?」とか子供から質問があっても答えられる大人が何人いるでしょうか。

まぁ、少し博学な人は、飛行機が動いているときには、翼の上面を通る空気が、翼の下面より早く動く事で、浮力を得て飛行機が飛ぶことは、知っているでしょう。

専門的に言うとベルヌーイの定理という計算式で、流体の速度が上がると圧力が下がることが証明されています。

飛行機でいえば早く動く翼の上の気流よりも、翼の下を流れる気流の方が強い圧力を持っているので機体を下から持ち上げる力(揚力)が発生するのです。
これは、身近なところでは机に置いた紙片の少し上の方に、平行に強く息を吹きかけると紙が吸い上げられる様な動きをするので体感できます。

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では、ここからが問題。

何故翼の上を通る空気だけ早く流れるのか。

良く見かける説明が、飛行機の翼が横から見た時、下面は平たく上面は膨らんだように作られている。

翼の前端で上下に分かれた空気は、後端に同時に到着しなければならないので、翼の上側の方が膨らんでいるから空気が流れる距離が長い、下側は平らだから短い。したがって、上の空気が速く流れなければならない。

という「等時間通過説」と謂われる誤説です。

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なんとなく正しい感じがするので信じてしまいそうになりますが、空気が後端に必ず同時に到着するという前提の条件は、よくよく考えると根拠がありません。そして実際の実証実験でも、この説は否定されました。

あまりに、この説が浸透してしまっているためNASAが公式に警告文を出したりしています。

かくいう私も、「等時間通過説」を鵜呑みにしていたんですが、同時にこんな疑問を持っていました。

「では何故紙飛行機は飛ぶのか」

ぺらっぺらの紙で出来た紙飛行機には上記の「等時間通過説」が当てはまりません。

そこで、改めて調べたところ、上面の気流を下面より早く流す仕組みは、やはり翼の形状にあるそうです。

ですが上面の膨らみは、そこまで重要な要素ではありません重要なの翼の後ろの縁の形状です。

翼の後ろ端を尖った形状にします。そうすると翼の上面の気流、下面の気流が後端でスムーズに合流できるようになります。

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このように翼面の角度や形状の工夫などで、飛行を目的に翼の上下を通る気流を滑らかに合流させるように促すことをクッタ条件を満たすといいます。

クッタ条件を満たすと翼の表面を取り巻くように気流が循環しようとする力が発生します。

「循環する」と説明せずに「循環しようとする」等の廻りくどい言い方をするのは、実際の現象としては、飛行中の翼の周りを気流が循環してはいないからです。

翼の周りを回るようなエネルギーが上面では後ろに行く空気の流れを加速させます。

下面でも前に廻り込もうとします。
ですが実際は前方から流れてくる空気の力が遥かに強いので押し流されてしまいます。

下面は、結局後方に向かう空気の流れになるのですが、前から来る気流の流れに若干の抵抗を与えます。

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結論、翼の上面の流れが加速され、下の気流には抵抗を与えるので、上面の流速だけが速くなりベルヌーイの定理により機体が浮くのです。

飛行機は凄い速さで進むので翼を取り巻いていた循環しようとする力が翼の先端から後方に向かい循環する気流のロープみたいなものを残します。

これを翼端渦といいます。

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翼端渦が出来るという事実によりこの循環理論は裏付けられています。

ちなみに、翼端渦の中では、回転する力により中心の気圧が下がり、ジュール・トムソン効果とよばれる現象で、渦の中心の気体温度が下がります。

まぁ難しいのでここでは単純に圧力が下がった場所は気温が下がると思って下さい。

渦の中心は温度が下がっているため大気中の水蒸気が凝縮して水滴になり、雲になります。

これが飛行機雲が出来る要因の一つです。(もう一つは単純にエンジン排気の水分の凝結)

つまり、飛行機雲は翼端渦(の跡)が可視化されたものなのです。

少し脱線しましたが、結論として飛行機が飛ぶメカニズムは以下の通り。

①翼の後ろ端を尖らすことで、翼の上下の気流を後方で滑らかに合流させるクッタ条件を満たす。

②クッタ条件が満たされたら翼の表面を循環しようとする気流が起こる。

③循環しようとする気流は翼の上面の気流の流れを強くし、下面の気流の流れを弱くする。

④翼の上面を流れる気流の流速が下面より早くなるのでベルヌーイの定理により機体が浮く。

となります。

「等時間通過説」の誤説は、ある研究者の調査によると日本国内の飛行機の説明で8割も使用されているそうです。
ですが前述の通り、この説明では紙飛行機の飛行原理や、背面飛行が出来る理由等が説明できません。

「等時間通過説」で飛行原理を説明している人がいたら、やんわり訂正してあげましょう。